武田陽介「等号否定」

TSのスタッフとしても関わっている武田陽介氏の個展「等号否定」@sanagi fine arts 
観に行きました。
http://sanagijima.com/exhibitions/index.html


展示タイトル「等号否定」。
概念とモノとの安易な等号関係を拒否するような、意味深なタイトル。

写真の多くは、虚構なのか現実なのか。ぎりぎりの「曖昧さ」を携えている。
ぱっと観ると何の変哲もない風景が、じっと目を凝らしていくと、ちょっと不思議な虚構的世界に見えて来る。


例えば、ある女性がヘッドホンをしながら通り過ぎる。その下に不思議な置物が置かれている。
だが他の写真には、女性だけが切り抜かれた写真があり、
また別の写真ではその女性の写真がポスターのように使われている一枚もある。


あるいは、劇画的なワンシーン(メロウなラブシーン?)が、見慣れた風景に同化した写真。
人物たちのポーズが劇画的であればあるほど、見慣れたその風景までも作りものっぽく見えて来る。

写真をじっと観ていると、被写体は作られたものなのか、現実なのか、疑ってみずにはいられなくなるのだ。



だけどふと感じるのは、
それが「セットアップ」であるかどうかなんて、実はどうでもいいことなんじゃないかということ。


自分たちが暮らしている世界には実におかしな風景があって、普段はそれを何の疑問もなく見過ごして生きているし、
ちょっと作り物だと思ってみると、何でもない風景までも作り物に見えてきたり。
肝心なのは、見える風景の側ではなく、観る側に変化が起こること。
そんな「メタ」な視点を投げかける装置としての役割が作品を通してあるように感じた。


「世界」の見方の定規をちょっとずらしてみる。それが写真家の仕事の一つなのかもしれない。


面白い写真が並んでいるので、近くに立ち寄った方はぜひ!
(作家のクリエイティズコモンズの思想から、展示の写真撮影許可)