津田直×後藤繁雄@赤々舎

実は清澄の会社の近くにギャラリーがあったという赤々舎。
そこで津田直さんと後藤さんの対談があった。
http://www.tsudanao.com/


今回は、4年前に出た処女作『近づく』の増補版が出版されたことに関連してのトーク
彼の写真の撮り方、そこに至るまで、
そして今後どうやって撮っていくかということについて
濃密な1時間半。


彼は写真を撮る時、地図を眺めて、極力、人の行かない場所を探し、
その土地に「落下する」感覚で身体を委ねる。
だからといって、彼が冒険家というわけではなく、その写真が秘境の写真を
目指しているというわけでもない。
なぜなら、そこには「クライマックス」を避ける「ズレ」の感覚が
存在しているからだ。


というのも、この『近づく』という作品。
3年ほどかけて撮り溜められたのだそうだが、
時にはフィルムを持たずに旅をする日もあったという。


毒ガスをつけて火口近くまでヘリで降り立ち、
マグマを見る。
しかし、カメラにはフィルムが装塡されていない!


彼は目的を持って、辿り着くこと(クライマックス)だけを
目当てに写真を撮っているわけではない。
その場に行って身体を馴染ませることや、
自分の眼で視ることへの執着、
そこから帰還して写真にすることまでを含んだ行為が
彼に撮って写真を撮るということだ。


だから儀式のように、その場に身を委ねる。

「-18度の流氷で泳いでから氷を撮る。そうしないと撮るべきじゃない」

という発言には、身体性への極度の興味と
写真家の文脈からの逸脱が表れている。



ちなみに、『近づく』というタイトルの意味。


「近づくのは僕一人。そのことによって、それを観た多くの人が遠くへ行ける」


まさに、ページをめくるごとに「遠くに行ける」作品。


静かな秋の夜長にゆっくりと眺めていたい作品です。