越後妻有トリエンナーレ�オススメアート

広大な土地に200点以上の作品が点在する越後妻有トリエンナーレ

しらみつぶしに全作品を見尽くすことなんて到底無理。
エリアを絞って、有力作品を計画的に回ることがオススメです。


そこで…「アート素人による 観ずに帰るな!オススメアート、ベスト10」発表!


三日間で30作品を観た中でオススメの作品ベスト10を、独断と偏見で勝手にピックアップ! 


観る人によっても、観るタイミングや回数やその日の体調によってさえも見え方が変わってくるのがアート。
その意味で、1人の人間がどう感じたかを参考にしてもらえれば…



1.クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン
最後の教室

松代にある廃校(体育館から校舎、教室中)に手を加えて作品とした『最後の教室』。
実は2ヶ月前に一度みているこの作品。当時は「お化け屋敷みたいで凝ってるな」くらいにしか思えなかった。むしろ廃校で勝手に遊んじゃったような軽い感じがして、衝撃はあったけど、その良さまではどうも伝わってこなかった。
だが今回、全く違うことを感じることができた。

その原因は「暗さ」について感じることができたこと。一回目には気付かなかったのだけど、校舎は窓を全て取り払って、完全に光を遮る加工がされている。暗くて当然のように思ってしまったのだけど、このクラヤミを作るには相当の手間がかかっている。そんな労力をかけてでも暗さを作った理由は、鑑賞者の「五感」を研ぎすまさせるためなのかもしれない。立ちこめるワラの匂い、遠くから聞こえる心臓の鼓動、転地が逆転したような蛍光灯の白い光。それは紛れもなく、どこかで体験した感覚の記憶。暗くなることで感覚が研ぎすまされ、それが記憶までも呼び起こす。

一緒に観賞した1人がこ「この作品はかつての生徒へのレクイエムのようだ」と言っていたが、学校やかつての生徒へのリスペクとがあってこそ、これだけの作品ができあがったのかもしれない。

校舎の一番奥の部屋には、卒業生の老人から思い出の品を預かり、展示してある。まさに学校の歴史が詰まった作品。そして同時にそれは鑑賞者の感覚の記憶ともオーバーラップしていくんだなぁと気付かされた。



2.行武治美/再構築


一面が鏡になっている部屋、といえばそれまでなんだけど、この家が建っている立地がいい。抜群にいい。これまで観てきたような山奥の棚田を借景にするのではなく、背の高いトウモロコシ畑の中にぽつんとそれは建っている。鏡の家が忽然と表れる様は、まるで鏡の国に迷い込んでしまったような気分にさせる。
 
内装では、一つ一つの鏡は固定されておらず、風にたなびいて揺らぐ。それにつられて、反射した光も揺らぐ。まるで周りのトウモロコシの芽が風に揺らぐように。
心地いい気分になれる場所だ。



3.鞍掛純一・日本大学芸術学部彫刻コース有志
/脱皮する家

まず何よりも、携わった人たちの根気と信念に感服。作業自体は地味なものだが、これをカタチにするのは半端ない根性が必要だったろう。
最もオススメは二階の解放感あるスペース。里山の景色が自分のものになったような気持ちよさに浸ることが出来る。


4.ジャネット・カーディフ& ジョージ・ビュレス・ミラー
/ストーム・ルーム

駅にほど近い古民家の二階は、かつて歯医者さんだった。そこに突如として、嵐が訪れる。かんかん照りの真夏に味わう嵐は、外とのギャップで不思議な気分になる。ここで一体何があったんだろう? 思わずこの場所で起きた何か不幸なストーリーを想像せずにはいられない。


5.潮田友子/記憶の部屋 下布川の人々


3回連続で出展している作家の作品。越後妻有に住む人たちの方言を活字にして、春夏秋冬別に掲示している。そのセリフを読んでいると、この方言を頭じゃなくて目と耳で楽しむことが出来る。方言ってすごく音楽的なんだなぁと痛感する。

他から自分の作品を持ち込んだ、というだけの作家も観られる中、ここでしかできない表現になっている。ちゃんと地域に根付いた作品であり、今回観た作品の中で最も地域の人たちへの愛を感じる作品。


6.福武ハウス

廃校の教室を利用して、様々なギャラリーが作家の展示をしている。
久しぶりに小学校に足を踏み入れた。(自分の卒業校じゃないけど…)。なんだか懐かしいような不思議な気分になった。思い出がねつ造されているのだろうか。


7.塩田千春/家の記憶

糸が張り巡らされた家。
どうやって作ったのだろう。止むに止まれぬ衝動的な何かを感じる作品。


8.石塚沙矢香/うかのめ

古民家の中に、お米が降って来る。その米にからみとられて、とっくりも茶碗も全て浮いている。思わず近づいて凝視せずにはいられない。
この作品を観ることを薦めてくれた街のおじちゃんが、「こんなふうにお米が降ってくればいいなぁと思わされた」という感想も、観る人によって感じ方も千差万別、と感じた。


9.夢の家

古民家の中に真っ赤な光。その中に棺桶。さらにその棺桶で寝れるって…本当にここで熟睡できるのだろうか。棺桶で見る夢ってどんなんだろう。興味は尽きない。泊まってみたい。でも泊まりたくない。笑。そんな作品。


10.ゴームリー もうひとつの特異点

精緻な設計を元に作られたであろう作品。外観の古民家と中に置かれた作品のフォルムにギャップがあって、それも面白い。



いや〜でもまだまだ全然観れていない!
会期が終わってからもまたいきたいです!
地図を片手に、里山の中を車を走らせ、アートに出合う。なんだかくせになりそうな旅の形なのだ。。