『サッカーという名の戦争』平田竹男

サッカー日本代表のマッチメイクを担当する日本サッカー協会の理事にして、ブラジルや中東でエネルギー政策を担当した元経済産業省の敏腕調停士でもあった著者が語る、代表戦交渉の知られざる舞台裏。


たいていサッカー関連の著書というのは、熱中して読めるほどの面白い著作が少ない。
個人的に感じるのは、本当にサッカーが分かっている人物が文字にして自分のサッカー観を語るということがほとんどないからじゃないだろうか。
ほとんどのサッカーについての言葉は、なんだかホントかよと突っ込みを入れたくなるような、システム論やマニアックな観戦記や…


でも、これは面白かった。


どうやってW杯や五輪の予選方式が決まっているのか。
著者が、監督の意向を聞き出し、それに従って、調整をして実現しているのだ。


たとえば、アテネ五輪の予選でとられたダブルセントラル方式。


なんだこのやり方は?とあまりに日本に有利な方式に腑に落ちなかった部分もあったのだが、
それも全て彼が中東とのタフなネゴシエーションを実現させてくれた賜物だった。


他にも、19:20キックオフ方式(これは画期的だと思う!)や
W杯共催でしこりの残った韓国との日韓戦の復活調整、
中東との試合を彼らの苦手な日本の冬にぶつけたりなどなど
本書で、初めて知ることになった彼の功績はかなりのもの。


もちろん結果は試合をする選手の実力次第なのだけど、
予選を突破するため、代表を強化するためにはマッチメイクの調整が不可欠で、
それは外交努力ともいえる各国との良好な関係作りと
戦略的な交渉力がモノをいうということが、よく分かる。


そして、これも初めて知った事実なのだが
W杯予選リーグでは消化試合などない、ということ。


ドイツで、クロアチアと引き分けて勝ち点1をとったけれど
この1のおかげで、今回の予選、第二シードW勝ち取れた。


逆に北京では0。
次回のロンドン五輪の予選は、シードがつかない。


メディアは予選突破が消えた時点で、「消化試合」と伝えてしまうけれど、
最後勝ち点を残せるかどうかが、次世代がシードを勝ち取れるかどうかの
瀬戸際経ったりするのだ。
(駅伝でシード権争いでデッドヒートするようなものか)


それにしても。
何か成功しているプロジェクトの裏には、
決して表に出てこない有能な人物がいるものだ。

サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台

サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台