ポニョは傑作か、それとも駄作なのか

崖の上のポニョ

崖の上のポニョ

先日封切りになった宮崎アニメ最新作、『崖の上のポニョ』。
公開と同時に賛否両論の声が聞かれていたが、僕の周りでもけっこう駄作なんじゃないかという手厳しい声が聞こえてくる。しかも宮崎駿を評価していたり、映画好きだったりする人の間から。

正直な感想、手放しに面白かったわけでも、時間を忘れるほどのめり込んだわけでもない。『モノノケ』ほどのテーマ性・社会性はなかったし、『千と千尋』ほどのエンタテイメント性もない。事前に聴かされていたように、「5歳児のための映画」なのだろう、という視点で観てしまった。
批判の一つに、説明不足の世界設定やストーリー性の欠如を指摘することがある。でも、さすがにあれだけのスタッフであれば、その辺りの不親切さや説明が足らないことなど承知で、あえて悪役なし、難しい設定なしの物語を選んだのではないか。そういうものはむしろ、極力切り落としたのだと。
たしかに『ハウル』の小難しさの反省から『ポニョ』はシンプルなところに向かったといった発言もあった。そして時代背景的に、無類にかわいい主人公が、なんの葛藤もなく相手を思う気持ちを行使するという関係性の物語は見当たらない。そういった時代の貧しさに対する反骨心と童話への憧憬から、こうしたシンプル路線をとったのではないかと、勝手に解釈する。

そういう視点を勝手に設定して観ていると、唯一無二な愛すべき作品に思えて来る。


だけど、そんな見方をした上でなお、やっぱり面白い映画を作ってほしかった!という願いみたいなものも消えないわけではない。途中、物語が動き出してから、素直に入っていけない感じではあったし、ラストの物足りなさも残る。

作品は作品のみで語れるものであるならば、(というか本来そうであるべきだ)
物足りないといわざるを得ない。

他では決して味わうことが出来ない冒険活劇を
ジブリ映画に求めることは、道楽でもあるのだから。