『アヒルと鴨のコインロッカー』
- 出版社/メーカー: デスペラード
- 発売日: 2008/01/25
- メディア: DVD
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ユーモアと切なさのパッケージング。
この映画を一言でいうならばそうだろう。ほとんど全ての物語が、この相容れない二つの要素を使って泣きのストーリーを作り出そうと躍起になっているというのに、伊坂幸太郎はいとも簡単に「笑って泣ける」物語を作ってみせるのだ。
『アヒルと鴨のコインロッカー』は2007年に映画化。瑛太ら主演。仙台に移り住んだ椎名が隣の河崎という男に誘われ、広辞苑を奪うために本屋を襲撃。その後、ドルジというブータン人を巡る回想が始まり、徐々に二年前の事件と現在の真実がつながっていく。
襲撃事件というスリリングな事項と、広辞苑収奪というチープな目的を繋げてそこにユーモアさを表出させる。しかも明らかに日本人だろ!?という隣の住人をブータン人として登場させ、物語の重要な謎として置く。ぞくぞくするほどではないのだけど、なんだか不思議だ、というこのさじ加減が抜群なのだ。謎を仕掛け、カードを一枚ずつめくっていくそのセンスがずば抜けている。
知らず知らずに物語に引き込まれ、登場人物に感情移入せずにはいられなくなる。
だからこそラストに待ち受けている、切ない謎解きが一層心にしみてくるのだと思う。
コインロッカーがどんな意味を持つのか。
最後に椎名が仙台を去る時のエピソードは、憎いくらいにしゃれている。ボブディランの挿入歌がそれを補強する。
上質のストーリーが、観る者を心地よい気分にさせてくれる映画なのだ。