ゴールデンウィークの雑誌三昧

最近は出版不況だというのに、話題性のある雑誌の創刊が相次いでいる。GWも引きこもるひとのためにおこがましくも新刊雑誌紹介。

まずは信頼出来る翻訳者でありアメリカ文学研究教授でもある柴田元幸氏の責任編集による「モンキービジネス」。
タイトルには「悪ふざけ」なる意味もあるそうだけど、念頭にあるのはチャックベリーの名曲「Too much Monkey Besiness」だとのこと。そんな解放感のある媒体を目指すと歌っているだけあって、表紙もポップだし、企画のたて方も肩肘張ってないし、連載陣もゆるさがあって親しみやすい。

自らの権限で自由に好きな作品を翻訳出来るというのは、訳者にとってこの上もない喜びではないかと思うが、自分の箱を持ってますますそれがやりやすくなった柴田氏の審美眼に注目である。
いまさらとやかく言わなくても、読ませる訳術を心得ているので安心して手にできるのだろうけど。
ちなみに体裁は「yomyom」を意識?

モンキー ビジネス2008 Spring vol.1 野球号

モンキー ビジネス2008 Spring vol.1 野球号

次に、リトルモア「真夜中」
リトルモアの詩的な嗜好性が存分に発揮された何にも似ていない珍しい雑誌。
文章、写真、デザイン、イラスト、などなど多方面に目を光らせながら、センスのいいものをごった煮にして、それでいてなんだか分からないけどよさそうなもの、という雰囲気を出すうまさがある。
「言葉は真夜中の星、写真は光、絵はともしび…」などと抽象的だけど、むしろその詩的な切り口がこのボーダーレスな表現をまとめる一つの軸として、機能していきそうな予感を感じさせる。
全部を通読したわけじゃないけど、写真と言葉のクロスリファレンスは、普通の文芸誌には到底観られないので、そのへんは期待。

季刊 真夜中 No.1 2008 Early Summer 特集:本は真夜中の庭で

季刊 真夜中 No.1 2008 Early Summer 特集:本は真夜中の庭で

次に、トラベルカルチャー誌「TRANSIT」
「NETURAL」がさらに深化して、発行元も白夜書房から講談社へ。
先日、ABCのトークイベントにも足を運んだが、この旅行雑誌冬の時代に入広がそれほど多いようには見えない中、取材班を八班出し、予算を超えても満足いくものを作ろうとする、編集長のその姿勢にすごく共感が持てた。
デザイナーや写真家と熱意を共有して、他の何にも似ていない想いのある旅雑誌を作るのだ、という意思はもちろん誌面からも伝わって来る。

初号は美しき中国。
最近にわかに悪いイメージがつきまとうお隣の国であるが、実際に足を運ばないと、実際に現地で観ないと分からないものがあるのではないか、そこから出発して作り出される世界観。
実際問題、中国の95%を占める漢民族の故郷が暮らすという客家土楼には、質素で質実剛健漢民族のルーツがいた。彼は都市の民族と違って肉も食べない。中国を支配している圧倒的多数と言われる漢民族とは何なのか、そんなことをまざまざと感じさせるという。

現場でしか分からない、旅を通してしか見えてこないことを、今後も伝えてくれそうだ。
もちろんガイドブック作りの観点からも、すごく刺激を受けたことは言うまでもない。

TRANSIT(トランジット) 1号 ?美的中国 (講談社MOOK)

TRANSIT(トランジット) 1号 ?美的中国 (講談社MOOK)

最後に硬派な思想書。「思想地図」
まだまだ読み切れていないけど、若い論客からこれほど時代性を意識した思想書、それも雑誌形式で出てくるのは面白い。
現代社会を読み取る一助になるだろうか。じっくり読んでいきます。

NHKブックス別巻 思想地図 vol.1 特集・日本

NHKブックス別巻 思想地図 vol.1 特集・日本