Art in You 宮島達夫

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六本木ヒルズのデジタルカウンターやMOTの常設展での作品。
ずっと気になっていてまとめてみる機会を待ち望んでいた作家の一人が、宮島達夫氏。
実家がひたちなかということもあって、帰省の合間に訪れた水戸芸術館。初めて来たのだけど、なかなかよいところです。エントランス付近ではフリマが行われたりしていた。高校も水戸に通ってたんだけどな〜。どうして足を運ばなかったものか。

入ると始めに目にするのは、「Death of time」。
真っ暗闇の部屋にデジタルカウンターが一列に平然と並ぶ。1~9をそれぞれ違うスピードでカウントダウンしていている。だがそこにはゼロがない。ゼロは数字が消える。つまり闇を意味している。真っ正面の1mほどのスペースには、点灯しないままのカウンターがある。それは混沌、カオス、ということなのだろうか。
この部屋に長くいると、本当の時間の流れがなんて概念的なものなんだろうと思い知らされる。つきつめていけば、宇宙の成立のような大問題だ。そんな手に負えない問題を頭に抱えながら見る数字の羅列は、まったく美しくもある。

この企画展の一つのテーマは、(タイトルにもある)アートは誰の心の中にもある、ということだ。
彼は「アート作品とは、感動するための装置に過ぎず、感動は人間一人一人の想像力の中にある」ともいっている。
「Counter skin』のように時間の流れを強く意識させる土地において、まさしく時を刻む(自分の体に数字を描く)行為はそれ自体が世界の歴史と自分の歴史を同化させるようなものじゃないか、という気がする。こうやって、時間(カウントダウンする数字)をつきつけられ、自分は歳を取っている、死へ向かって疾走している、という感覚を顕在化させることは、まさに生の輪郭をつかまえようとすることに違いない。
その意味では、あえて広島や沖縄で「時間」と「生」を実感することは、風化しようとしている歴史の輪郭を追いかけようとする行為に思える。

こうやって観るものに何かを感じさせようとする意識が、作品のすべてからありありと伝わってくる。それが宮島作品の魅力なのかもしれない。少なくとも僕にとっては。

何かを考えずにはいられない。そんな衝動を起こさせることこそが、アートの力の一つである。
だから、アートには世界を少しだけ変える力が備わっていると思ってしまうのかもしれない。