南方熊楠「クマグスの森」


watari-um - exhibition - 南方熊楠展


ワタリウム美術館を訪れるのは、これが初めてだ。
意外だったのは、けっこうマイナーだと思っていたクマグス展だったが、人が溢れるばかりの盛況だったこと。

いったいどんな職種の人が来ているのだろう。


周りで耳にする機会が多かったことと、どんな人物かもあまり知らなかったこともあって、目で見るのが一番、と足を運んだわけだが、そのジャンル分け不可能な探究心には恐れ入るばかりだ。


性差の問題、身体の問題、人肉食、生物模写、菌類の研究。

おびただしいラフスケッチは彼の頭の中の複雑さを垣間見せる。


彼の描く有名な思想に、「南方マンダラ」がある。

生物の関係性を仏教の世界に引きつけて、その因果を可視化したものだ。


彼が見ていた世界。

それは、我々が抱いている知識だけで実感の伴わない生物のイメージではなく、学問を追究し、没頭したものだけが見える生命の神秘のようなものではないだろうか。


彼の紀伊半島での森林伐採反対運動などを見ると、今、騒いでいる環境問題などまだまだ実感が伴っていないなと思えてくる。


彼には、失っていく生物の貴重さがいたいほどみえていたのかもしれない。だからこそ、反対の行動を起こせた。

生物の実態を知らずに、それを守ろうと声を上げることのむなしさを――最近の再生紙偽装の問題があったからだろうか――どうしても感じずにはいられなかった。