ノルウェイの森、観ました


ちょっと前のことになりますが、トラン・アン・ユン『ノルウェイの森』を観ました。


少々好きな作家が映画化されるというのはたいてい複雑な心持ちなものですが、今回に関しては監督が小説に惚れ込んで、7年(?)越しに映画化を実現するという背景を聞いていたので、村上春樹の世界というよりは監督を通した「ノルウェイの森」ということで楽しめばいいのかなと足を運んだ次第です。


感想はというと…
おそらく映画的な文法で言うと緻密に計算されたメタファーがあちこちに散りばめられ、それを読み取っていくのがスリリングなのでしょうが…そういった視点を持ち合わせていない、単純にストーリーを追ってしまう者としては、どうしても物足りなさを感じてしまう。


やはり小説たで描かれた、登場人物たちの抱え込んだもの(過去だったり記憶だったり…)は二時間で語り尽くせるものではなく、どうしてもエピソードのつぎはぎ感は拭えない。
映像自体に小説の持っていたメッセージ(性的だったり生と死だったり…)を託すと言う作業は、結局、必然的なのかもしれないなぁと思わされた。


愛する人の喪失、が主題ではあるけれど
たとえば「せかちゅー」的なお涙頂戴な感傷的な部分はほとんどない。
(ないよな? 泣かないよな、この映画で…)
それなのに、すごく胸が痛くなる。涙腺とかそういうものではない、もっとひりひりする部分をいたく刺激されるような、そんな世界観が描かれています。



まぁ映画の批評についてはコチラを参考にしていただくとして…

映画「ノルウェイの森」を読み解きながらほとばしるドーパミンっ、村上隆さん @takashipom の 壮絶・悶絶・絶賛!っぷり。 - Togetter
映画「ノルウェイの森」を見ました - 内田樹の研究室


中身に関係ない感想として一つ。


ノルウェイの森」に対して、作家本人が「リアリズム小説に挑戦したかった」という発言がある。たしかに映像としてみると、すっごく「時代」を感じる内容だったんだなぁと改めて思わされた。全共闘とか寮とか緑のサングラスとか。
小説がひじょうに感情的に書かれているから、そのあたりの未経験の時代背景について想いが至らなかっただろうけど、「そうかーこういう時代かー、そうだよなー」とか思いながら観ているといかに小説読んでいる時に、自分の都合の良い世界を創り上げて読んでいたかに気付かされる。



なんだか原作をまた読んでみたくなった。
そして単行本、買いましたよ。
探すのが面倒と言う理由だけで。
完全に戦略に乗っている気がする。。