日本代表監督という稼業

勝てば官軍、岡田監督の評価が上がっている。

岡田さんのサッカーが好きだとは思わないけど、
環境問題に興味を持ったり、「ベスト4」を掲げて選手のモチベーターになったり、
何より今回の活躍でその言葉はますます説得力を持つんだろうと思う。


ネットで徘徊してて、見つけた講演録。
もはや周知な内容なのかもしれないけど、備忘録を兼ねて。
岡田武史氏が語る、日本代表監督の仕事とは (1/7) - ITmedia ビジネスオンライン




全部勘が当たるかというと、そう当たりはしないですね。でも、当たる確率を高くする方法があるんです。それは何かというと、「決断をする時に、完全に素の自分になれるかどうか」ということです。「こんなことをやったら、あいつふてくされるかな」「こんなことやったら、また叩かれるかな」「こんなこと言ったらどうなるかな」、そんな余計なことを考えていたら大体勘は当たりません。本当に開き直って素の自分になって決断できるかどうか、これがポイントなんです。



経営者でも「倒産や投獄、闘病や戦争を経験した経営者は強い」とよく言われるのですが、どん底に行った時に人間というのは「ポーンとスイッチが入る」という言い方をします。これを(生物学者の)村上和雄先生なんかは「遺伝子にスイッチが入る」とよく言います。我々は氷河期や飢餓期というものを超えてきた強い遺伝子をご先祖様から受け継いでいるんですよ。ところが、こんな便利で快適で安全な、のほほんとした社会で暮らしていると、その遺伝子にスイッチが入らないんです。強さが出てこないんですよね。ところがどん底に行った時に、ポーンとスイッチが入るんですよ。



よく標語が書いてあるカレンダーがあるじゃないですか。ジョホールバルから帰ってきた後、吊るしてあったのをたまたま見ると、「途中にいるから中途半端、底まで落ちたら地に足がつく」と書いてあったんです。その通りなんですよ。



一番上の目標をポンと変えると、オセロのように全部が変わります。「お前、そのパスフィードでベスト4行けるの?」「お前、そんなことでベスト4行けるのか?」と何人かの選手にはっきりと言いました。「お前、その腹でベスト4行けると思うか?」「夜、酒かっくらっていて、お前ベスト4行ける?」「しょっちゅう痛い痛いと言ってグラウンドに寝転んでいて、お前ベスト4行けると思うか?」、もうこれだけでいいんです。



 Enjoyの究極はどういうことかというと、自分の責任でリスクを冒すことなんです。日本の選手は「ミスしてもいいから」と言ったら、リスクを冒してチャレンジをするんです。ところが「ミスするな」と言ったら、途端にミスしないようにリスクを負わなくなるんです。



会社の商品が売れないで倒産しそうな時に、「僕は経理ですから」とか言っていたらダメ、どんなにすばらしい計算をしても会社が倒産したら一緒です。残り時間10分で0対1というのは、「みんな外に出て商品を売ってこい」という時です。



勝負の鉄則に「無駄な考えや無駄な行動を省く」ということがあります。考えてもしょうがないことを考えてもしょうがない。負けたらどうしよう。負けてから考えろ。ミスしたらどうしよう。ミスしてから考えたらいい。
「余計なことを考えて今できない、なんて冗談じゃない」と言います。できることは足元にある。今できること以外にない。それをやらないと、目標なんか達成できないんです。



運というのは誰にでもどこにでも流れているんです。それをつかむか、つかみ損ねるかなんですよ。
俺はつかみ損ねたくない。だから常につかむ準備をしている。自分でつかみ損ねていて、「運がない」と言っている人をいっぱい見てきました。「俺はそれをつかみたい。お前がたった1回ここで力を抜いたおかげでW杯に行けないかもしれない。運を逃してしまうかもしれない。お前がたった1回まあ大丈夫だろうと手を抜いたおかげで運をつかみ損ねて、優勝できないかもしれない。俺はそれが嫌なんだ。パーフェクトはないけど、そういうことをきっちりやれ」と言います。


できるならどんな小さなことでもいいから、チャレンジをしてもらいたい。頭でごちゃごちゃ考える前に踏み出してみる。少々壁や何かがあろうが、そんなもの関係ない。必ず乗り越えられる。壁というのは邪魔をするためにあるのではない。自分の気持ちを確認されているんです。「本気でこいつはやってんのかどうか」と。そういうつもりでチャレンジに一歩踏み出していただければ幸いです。