『小説の読み方』平野啓一郎

小説の読み方~感想が語れる着眼点~ (PHP新書)

小説の読み方~感想が語れる着眼点~ (PHP新書)

一時、文壇を賑わせた水村未苗の論説『日本語は亡びるのか』への、返答として平野啓一郎が自身のブログでこんなことをエントリーしていた。

 最近、一部でとんでもなく反動的な日本語論が語られていますが、僕はそういう傾向に反対です。
 近代文学を読んだ方がいいというのは、当然の話ですが、だったら、『万葉集』から現代文学まで、何でも一通り読むのが一番良いと思います。

そして現代の情報量の膨大さ、(過剰供給と過剰流動性時代時代への突入)と、それゆえ現代の言葉がスリム化しようと変化していることを指摘する。

ネットの登場以来、僕たちに入手可能な情報の量は、到底、一生の間に処理しきれないほどの分量になり、しかもそれが、際限もなくデータ化されて蓄積され続けており、更にweb2.0以降は、受信者がまた発信者となって、気が遠くなるような過剰供給と過剰流動性の時代に突入しました。
 重要なのは、にもかかわらず、僕たちが情報処理に費やせる時間が、結局のところ、一日24時間、一生にしてせいぜい80年程度と、それに応じては決して「増えない」ということです。

 (中略)そうした中にあって、日本語は今、生き残りをかけて環境適用しようと、必死でその体型をスリム化させようとしています。


その上で、現代の「言文一致」について考えるべきだという立場を取っている。

『小説の読み方〜感想が語れる着眼点』刊行! - 平野啓一郎 公式ブログ



ここのブログでも書いたけど、あの『日本語が〜』はなんかヒステリックな偏向論な気がして、違和感を覚えていたんだけど、彼のエントリーを見て、自分の感じていた違和感が少しつかめたような。


つまり、『日本語が〜』があまりに過去(近代)を見すぎていて、現代から未来をないがしろにしすぎているのでは?という違和感だったのかもと改めて思いました。


と、そんな前段階があって、購入。


タイトル通り、まさに『小説の読み方』。ポールオースター、伊坂幸太郎、など好きな作家から、『蹴りたい背中』、『恋空』などの「現代」的な小説まで。


しかし…残念ながら期待したほどの面白さはなかったのです。



なぜかというと、「どう読めば面白いか」ということを小説家視点で語る内容なので、1P1テーマでさらっとしか語らない。つまり、批評なのはなくあくまで入門・手引書なわけです。

せっかくだったのでもっと彼視点で同世代小説を切ってほしかった。。
まぁ難しいのだろうけど。批評家じゃないですしね。