『日本の「安心」はなぜ消えたのか』

『日本の安心はなぜ消えたのか』が面白い。

「心がけでは何も変わらない!」

社会心理学から見た現代日本の問題点」と称してアンチ精神論を掲げ、
日本企業の不祥事やいじめはなぜ起こるかなど
日本人の集団心理を実験によって明らかにしている。


なるほどと思ったのが、「帰属の基本エラー」と原理。

人は相手が何かをした時にその原因を相手の心に求めてしまう。
人間の行動は周りの状況からしぶしぶやっている場合もあるということを心では分かっていながら、
実際相手の行動を見るとそうした「事情」は汲み取らずに、
そういうことをする「心の持ち主」なのだと心に結びつけてしまう。

なるほど、たしかにそうだ。
店員さんなんか、商売と分かっていても素敵な笑顔を見ると
性格いいなー!と思ってしまうし。。


この原理から見ると、日本人とは、
「本当は個人主義なのに回りの環境に合わせて集団主義に振る舞っている」のに、
心から「集団主義」な国民なんだと誤解をしてしまっているとのこと。

たしかに、高度経済成長など集団で事を成し遂げるのが日本人の美徳と言われているが
実際そうでもないようだ。つまり、ホントのところは環境に合わせているだけだと。


そんなも正直者でも、集団主義でも、他人を信じる社会でもなかった日本人が
急速にグローバルな都市的な社会に急速に移行しすぎたらどうなるか。


それはムラ社会で他人を信用する必要のなかった社会が
自由に人の出入りのある都市的社会になるということ。
そこには、不信の連鎖が起きるという。


年金問題、マンション偽装、食品偽装……

不祥事を隠そうとする企業には
「ここで公表しても正直者とはみなされない」
との消費者・マスコミへの疑念から
逆に不祥事を隠し、被害を大きくしている。。


では、社会に安心を取り戻すにはどうすればいいのか??

それは、真の意味で正直者が得をする社会にしていくことだと
著者は言います。

その例として、人を信用する事から始めようとする
アメリカ人の発想が紹介される。


集団に所属するだけで集団の心理が働き、
そこで悪い事が抑制されるというシステムは
一見、合理的だけれども根本的な人間心理を正しくしたわけではない。


心理学から見る社会は、全く違う見え方をするものだ。