『情報革命バブルの崩壊』
急成長を遂げるインターネット業界の知られざる暗部を業界内部の立場から暴露し、将来のビジネスモデルとしてのバブル崩壊に警鐘を鳴らす著作。
ネットがいかに金余りの社会からお金を集めて「時価総額経営」という博打経営を打っていたかを明らかにし、金融不況を迎えた今、その経営スタイルでは立ち行かなくなるだろうと指摘する。(その対象が、ソフトバンクだったりする。)
そもそもネットは無料、という前提が広まりすぎてしまったことで「インフラ」部分での初期投資は増大し、それに追い討ちをかけるように通信量は飛躍的な伸びを見せる。(winnyなどの常置接続の影響だ)
そして、ネット「無料文化」の見直しと題してこう指摘する…
…ハイテク産業は、フロンティアとして資金を集めて技術開発を先行させた。その高い技術を無料でユーザーに使わせなければビジネスモデルが組めないというのは、市場に資金が余っているからこそ可能なことである。
無料文化というネットにカネを払わないユーザー優先の世界が出来たはいいがそれを支えてきたのは世界の金あまりであって、ユーザーの誰もがお金を払わず、ただやすいインフラ代金程度で未来永劫ネットが成長して行くわけがない。
-
-
- +
-
自分の所属している会社でも、「これからはネット!」と気勢を上げて取り組んでいるが、これまでの事業との連続性を欠いてネットにシフトしすぎると落とし穴に嵌るんじゃないかと少々心配になる。(もちろん大部分は外向けの体のいい公約なんだろうけど)
ここからは自社の話になってしまうのだけど…
ネットに取り組むからといって、何もネット周りのことを全て自社開発する必要もないんじゃないだろうか。
結局、広告料で稼げるのはポータルくらい。そのポータルにしても、トップページのニュースは他新聞社からの買い取りやリンクだったりするわけで、「客寄せ」「サイト作り」「情報提供」は全く切り離していいわけだ。逆に、「情報収集」や加工のスペシャリストになれば、金を払ってでも買いたいという企業や個人は表れるはずで、何も後発で「クチコミ」を集めたり、「旅行予約」を始めたりする必要もない。
情報に付加価値があれば優良顧客とがっちり手を結ぶことが(うまくいけば)出来るのであって、情報零円と思い込んだ目移りの早いユーザーめがけても迷走することもなくなるだろう。(それはそれで別にビジネスがあるのであって)
その付加価値をいかに出すかが、今後重要になる。
しかし、編集業務を全て外部に委託してはノウハウも人脈も残らない。
作れば売れた時代はその方が効率的だっただろうが、情報過多な現代、いかに編集のスナップを利かせるか、それを醸成していかねばならないと思うのだが…
- 作者: 山本一郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/11/20
- メディア: 新書
- 購入: 8人 クリック: 120回
- この商品を含むブログ (67件) を見る