横浜トリエンナーレ

3年に1度のアートの祭典、横浜トリエンナーレ。行ってきました!

世界中から73名のアーティストが参加した今回の展示。横浜の各会場を散策しながらどっぷりアートに触れられるまたとない機会です。
会場は7つにも分かれていてじっくり見て回ると一日ではとても回りきれない。なので、入場券も2日間有効になっている。今日回ったのはメイン会場の新港ピア、赤レンガ、日本郵船海岸通倉庫。三渓園は時間切れで行けなかった。(三渓園だけバスで30分ほどと離れているのです。)

↑新港ピア

今回のテーマは「タイムクレヴァス」。時の裂け目。
総合ディレクター水澤勉氏によると
前近代、後近代という近代が作り出した時空の座標の中での思考の限界を超えていくには、そこに生じている時空間のクレヴァスをのぞきこまないといけない。その体験を感覚化し、共有するために与えられたコミュニケーションの手段がアートである。ということを言っている。

タイムクレヴァスへと下降することによって、個々人、社会、国家、性、世代、人種、宗教と言った相互の差異を感じ取ることが出来る。それこそがアートの力であるというのだ。

そのようなテーマがあるからこそ、選ばれた作家は身体性を強く打ち出すパフォーマンス的要素が強く、ビデオアートや舞踏なども多用されている。昨今急速に広がりを見せるグローバリゼーションを念頭に置いてのテーマでもあるのかもしれない。これだけ世界のあらゆる映像や情報を簡単に取り出せる時代にあって、どんどん異質なものに反応する感情が日常に埋没し、麻痺していく中で、それを覆される体験を多く与えられたように思う。


ヨナタン・メーゼ

↑ペドロ・レイエス《ベイビー・マルクス》かわいい人形劇ではあるが、ネタは共産主義社同士の喧嘩だったりして、風刺が利いている。かわいいだけに見入ってしまうのか、人が多くたまっていた。

↑トニー・コンラッド 鏡から音が出る。それがたつ場所によって聞こえ方が変わる。どういう原理か分からないけど、不思議な気持ちにさせる。

印象に残った作品をいくつか

チェルフィッチュ「フリータイム」
以前別の機会に観たのだけど、改めてビデオで観る。現代の言葉遣いと意味を伴わない身体の動きが、気になって眼が離せなくなる。最初に見た時は全然消火しきれなくて、気持ちの悪さだけが残ったのだが、こうして時間を置いてみてみるとそれが何を意味しているかということよりも、そこに目がいってしまう自分の作品観を痛烈に批評されているようで面白い。虚無的な現代の空気感をうまく切り取っている。


◎ポールマッカーシー
広い部屋に大きなおぞましい映像を大写しにした作品。鼻の高い人種の男女が切り合ったりして、血まみれになる。裸の女がオナニーしている。そんな映像がいくつも混じり合いながら壁に映される。気持ち悪いけど、観ずにはいられない、恐いもの見たさ。この鼻の高い人たちは何を意味しているのか。なぜこれほど血まみれになっているのか。
解説によると……彼は「性、排泄、暴力」といったタブーを過激なパフォーマンスやビデオによって明らかにする。マンガキャラクターなどの消費文化イメージを流用し、規範的な世界をグロテスクで混沌としたものに変えてしまう。それによって欺瞞的な制度を批判し、抑圧された現代人の姿を暗喩的に表現する。他の作家で牛の臓器をかき混ぜる映像もあったのだが、普段の生活の中で考えなくて済むようなもの、社会的規範によて「考えないように」させられているものを、暴き出す効果があるのかもしれない。だからこそ、これほど気持ちの悪さを感じながらも、目を背けることが出来ないのだろう。

◎マシューバーニー
同じくグロテスクで神秘系のインスタレーション(映像)。怪しい儀式のようなセットで、ガムランのような楽器をならす中、女性が排尿したり脱糞したりする。牛が出てきたりもする。こういった作品を見てしまうと、普段生活している「意味性の世界」から突如脱線させられて、世界の見え方が暴力的に塗り替えられる感覚に陥る。現代アートを代表する作家の1人で、ビョークのだんなさん。
代表作<クレマスターサイクル>では肉体と性に関わるモチーフを得意な造形表現と時間感覚を映像化し、幻想的、耽美的で寓意性に富んだ作品に仕上げている。


勅使川原三郎
佐東利穂子氏による割れたガラスの破片の上を踊る《時間の断片 - Fragment of Time》。光の加減や荘厳な低い音とガラスの割れる響き、神秘的で見たこともないような身体の動きが交わわされ、人間の肉体の認識が新たにさせられる。何よりもすごいのは三方をガラスの破片で囲まれたその舞台装置である。見ているだけで痛々しい。身体表現だけでなく、目の前の異質な空間から目を離すことが出来ない。しかも1時間待ち!!


ミケランジェロ・ピストレット

ミランドジュライ『通路』。木の板に書かれたメッセージを読みながら通路を歩いていく。そこを入る時と出来る時とは違った心持ちになれる。こういうのは好きです。


↑イエノイエ(設計 平田晃久)

↑チョウ・ミンスク ジョセフグリマ&ストアフロントチーム『リングドーム』

↑ポールマッカーシー

中西夏之


↑マイケル・エルムグリーン&インガー・ドラッグセット『落っこちたら受け止めて』。デパートの吹き抜けに突如として表れる時の止まった瞬間。まさにハプニング的でユーモアがある。買い物のおばちゃんも驚いていたり。

全体に、ハプニングやパフォーマンスなど刺激の強めなアートが多い。観るだけではなく、自分の常識をぶち壊しにいくのにいいかも!