イントゥ・ザ・ワイルドの試写を観に行った(ネタばれあり)

ジョンクラカワーの原作『荒野へ』をショーンペンが監督脚本、エミールハーシュが主演の映画『イントゥザワイルド』を観に行った。ちなみに雑誌、コヨーテの主催。
http://intothewild.jp/top.html

裕福な家庭に育ったアメリカの若者クリスは大学卒業とともに姿を消す。彼は突如として、放浪の旅に出るのだ。旅の終着点はアラスカの大地。そんな彼が、アラスカの荒野に身を委ねそして餓死で死んでいくまでの旅の行程をロードムービー風に描く。
まさにコヨーテ的要素満載な「旅」の映画だ。

実話を元にして作られている(旅の行程はメモとして見つかっている)とはいえ、一番の魅力は主人公が、いかに物質世界と決別して、新たな自分を見つけていくかというところだろう。とはいえ、食傷気味な「自分探し」系に収まらない気持ちよさがあるのは、主人公クリスの会う人を虜にするその人間的魅力と自然の映像をリアルに映し出しているからだろう。

実際、クリスは家庭不和で子供時代を「我慢」して過ごした過去があり、それが人生の「タメ」になってこれほどの冒険が出来たのかもしれない。不幸があったからこそ、自由や一人で生きることの有意義さを見いだすことが出来たのだ。

だが、アラスカの大地は感動や自由だけをクリスに与えたのではなかった。

そこでは一人の人間の無力さと自然の厳しさが痛いほど描かれる。

河の急流に流されかける。住む場所にクマが表れる。大きな鹿を狩猟したはいいが、捌ききれずにウジ虫がわく。空腹で耐えきれずに食べた草の毒に苦しむ。

結局、彼の最後もこの毒のせいで動きがとれずに餓死を向かえることになるのだ。

そして観ている方は考えさせられることになる。

彼の人生は幸せだったのだろうか、と。

死ぬ間際、捨てて来た両親と再会する夢を見るクリス。
人生の喜びはもしかすると、一人では得られない類いのものかもしれない。だとしても(それならばなおさら)一人になって過酷な状況に身を置かなければ、誰かと生きる喜びを本当の意味で見いだすことは出来ないのじゃないか。

彼の壮絶な生き様はそんなことを思わせる。

自分を探す旅なんて無謀なことして社会はそんな甘いもんじゃないよ、と一笑に付す人もいるかもしれないけど、観終わってみてそれが出来ないのは、僕らが生きる上でちょっと邪魔だからと傍に置いておいたものの存在を彼が思い出させてくれたからだ。


まぁ、なんだかんだいって、出演者の演技はすごいものがありますので、ぜひ。
ちょっと長いけど(2時間半)