森山大道 『レトロスペクティブ&ハワイ』

森山大道初の大型回顧展ということで、写真美術館へ
東京都写真美術館

2つのフロアを使って、これまでの作品200点と新作の『ハワイ』大型プリント70枚を展示。まとめてみる機会は初めてで、これまでの流れが分かって面白い。

「ブレ、ボケ、アレ」をテーマに掲げ、写真界への挑発を続けていた彼が、「写真とは何か」を突き詰め、スランプに陥り、そこから再び突き抜けていくまでの流れを追うことが出来る。特にスランプ時代に北海道を訪れてから『光と影』へ到達し、そこからさらに『新宿』「大阪」『ブエノスアイレス』といった「街」「風俗」を撮るに至るまでのメンタリティの変化は、写真を見ていても伝わってくる。

これだけのスナップを撮りまくってきた写真家にとって、光にシンプルに反応すること、写真を撮る行為をどれだけ身体的になじませるかということは何より重要なことだったに違いない。


彼の写真を観ていると、ハワイのような色彩に溢れた空間でさえも、無限の時を与えられかのように静止して見える。写真なのだから時間の一部を切り取っているのは当たり前なのだが、もう何千年も前からそこにあって風化されてしまったもの、だがそれでいて、これからも変わらずそこにあるかのような普遍性をも持ち合わせた風景。日常の何気ない風景でさえも、そのような遠い時間の流れの一部に組み込んでしまう魔法が、そこにはある。そんな気がする。

ハワイの作品は、イメージされるハワイとは全く違う空気がそこに流れている。ぎらぎらと暑くて騒がしいはずの風景を、吸い込まれるような静まりかえった場所に変える。というよりも、もともと持っている静けさを抽出しているだけなのか。
こんなハワイはココでしか観れない。

一見の価値あり。