『ウェブ時代をゆく』


梅田望夫の著作を読むのはこれで2冊目である。
1冊目は茂木健一郎との対談『フューチャリスト宣言』。この2冊はウェブの進化それ自体ではなく、そこからいかに社会変革が起き、それがどのように我々の可能性を拡げてくれるかというところを楽観的に語った、私の中でいわば思想書のような位置づけの本なのだ。



彼の姿勢はとても明快に見える。
自らは「オプティミズム」であるという自覚の下、あえて楽観的姿勢を貫いているようだ。それはインターネットの負の側面(犯罪や子供への影響、コミュニケーションの負の変化などなど快挙に暇がない)とはあえて全く別の次元で、ネットの可能性を大いにぶち上げることで、これまで大組織に属せないばかりにチャンスを失ってきた者(主に若者)を勇気付ける立場を取っている。


この著作を読んでいると、これまで疎んじられてきた社会のレールを外れての生き方、働き方に、逆に可能性すら感じてしまう。それは著者が、ネットの技術革新の変化だけではなく、そこに社会全体の変革を俯瞰する視点を持っているからこそ見えてくる指摘なのではないか。

だからこそ、ネット革新、グーグル礼賛で終わるのではなく、その先の「現代」以降の働き方にまで言及出来る。


ここでは、「けものみち」を歩んでいく生き方へのアドバイスが並んでいる。
産業革命以来の技術革新の時代。
アナログで生きてきた大企業の上司からは得がたいアドバイスである。


ウェブというどうにも可能性の詰まった技術をいかに活用し、そしていかに自らを成長させていくか。
そこには、「勤勉性」や「自助努力」といった(一見古風な)言説も見られる。そのことからも、この著作がウェブを主役にして書かれた本ではなく、今ココで働く僕らのために書かれた本だ、ということがひしひし伝わってくる。


これから2000年代も残りわずかとなり、ますます誰も体験したことのないような時代に突入して行く。その時代を生き抜くための、一つの参考書として、非常に有意義に読むことが出来る。

今、自分がおかれた状況に満足できていない、
そんな人に読んでもらいたい一冊だ。



ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)