文化系トークラジオ Life @紀伊国屋ホール


TBSラジオの月一番組、Lifeの書籍化を記念して、パーソナリティの皆々様が一堂に会する公開トーク


メンバーは

  • 鈴木謙介(著作は知っていたが名前と顔は知らなかった)
  • 仲俣暁生(編集者)
  • 佐々木敦(批評家、ブレインズのボス)
  • 柳瀬博一(日経BP編集、ほぼ日に参加していることで知っていた)
  • 斉藤哲也R25などのライター)
  • 津田大介(音楽・ITライター、ある種特異なジャンル?)
  • 森山裕之(ブレインズの講師。QJの元編集長)

豪華である。
それぞれ2人ずつが「仕事とは」「大人とは」「社会に出るとは」とのテーマで
対談をし、その流れを受けて最後に全体でトーク
ここのラストが最も緊張感があって、ここをながくやってもらいたかったくらいだ。


内容をざっくりおさらいしてみよう。

まず、「働く」テーマでは職業は具体化できるけど、なり方(プロセス)はその人それぞれであってその人次第である。目の前の人や仕事にどう対処するかで、自分が試される。会社の看板を背負っていても、そこは個人の力量なのだ。


次の「大人になる」というテーマ。
消費の現場からは消費者にさせまいとする圧力があり、逆に保守派からは古来の大和魂といった価値観をつきつけられる。その狭間にたって、大人になることの意味を問われる今の若者はしんどい。けれど、個々人でロールモデルを見つけていくしかないだろう。


さらに「社会に入る」
政治を扱うことに付いて。
対談者、佐々木さんは政治をテーマに掲げるとスローガンになってしまう。そうではなくて、同時代に生まれた表現を合わせ見ると受け手がそこに政治を汲み取ってしまう、という現象の方がリアルではないか。
一方、森山さんは、それを認めた上で、あえて政治をテーマに掲げて分かりやすく打ち出すことで、直球のきづきを読者にもたらさなければならない、との見解。



さらに全体トークの「ポスト失われた10年に語るべきこと」。
一票を投じても政治が変わらない意識がそこにある。だからこそ、「豆腐屋で豆腐を買う」という消費行動によって、潰れて欲しくない豆腐屋を選択する。その延長線上に大儀の政治ではない、小文字の政治、があるのではないか、そっちの方が若者にとってもリアルなのではないだろうか。という提言。

それに対して、ポジティブな運動の効力として、人々を元気にさせるメシアニズムとしてそれは解釈できるけれど、そこには同時に冷めた人もいる閉塞感がある。


消費で社会を変えることへの賛成票として、柳瀬さんは
「日本は役人の国である。政治のプロセスが機能していない、政治の動きと政治化が連動していない、不完全な民主主義である。これはもはや消費で変えるしかない。その例として、1976年の宅急便がある。マーケットから動いて、運輸の制度を変えた。これは中国でも同じことが言えて、日本の漫画がユースカルチャーに影響を与えて、NBA選手を多く輩出したりするようになった。消費の可能性に自覚的になるべきではないか」

というもの。

これまで一票を投じる重さ、について全く懐疑的だったのでとても腑に落ちる理論だった。増殖する資本主義社会の中で、弱肉強食なネガティブなイメージしかなかった消費が、意識的なオピニオンとして機能し、非常に力を持ち得るということは痛快でもある。

そしてそれが集まって、「運動」にまでなることがより大きな力を持つことになるのだろう。


今後もラジオの方でぜひぜひ聞いていきたいものである。