サッカー批評も変わるべし〜『オシム 勝つ日本』〜

オシム 勝つ日本

オシム 勝つ日本


W杯まで残すところ19日。代表をめぐる報道もいよいよ過熱してくる時期ですね。


W杯での日本の活躍を期して、このタイミングで耳を傾けておくべきはやはりこの人でしょう。オシム前日本代表監督。
50時間のインタビューをもとに構成されており、代表から世界のサッカーのトレンド、問題点まで網羅的に語り尽くしている。帯には「ココに書かれているすべてを信じてはいけない 人生もサッカーも常に変わりつつあるからだ」と読者に読んで満足するだけでなく、「真剣に考えること」を求めている。選手にもメディアにもファンにも、自分で考えることを啓蒙していたオシムらしい言葉なのだ。



彼の語る言葉は、ロジカルで哲学的で、サッカーというスポーツを語っていることを忘れてしまうほど聞き入ってしまう。


これを読んでいると、日本のテレビもそろそろ絶叫や煽りや単純さから脱して、もっとサッカーを真剣に取り上げることを目指してほしいなぁと思う。感情的になって、「監督を変えろ」「ベスト4の目標を修正しろ」と批判だけを繰り返すのではなく、ベスト4への「プロセス」の部分をもっと吟味したり、決定力不足やフィジカルの弱さを解消する手だてを議論すべきではないのだろうか。


例えばオシムは、日本人FWが一人で局面を打開できない(フィジカル的に劣る)ところから論を出発させ、MF(俊輔、遠藤、ケンゴ)がもっと走ることを求めている。スペインとの違いは、MFとしてパスを供給するだけでなく、ゴール前に顔を出せるかどうかの違いだ、と。
イニエスタもシャビも、走る「量」が違う。
JリーグのようにFWに預ければ点が取れるわけではない代表では、MFのアグレッシブさが点の可能性を上げていく、というのだ。


たしかに日本人MFはパサー、というイメージが強い。フィジカルとは、オーストラリア人のような屈強さだけではなく、1試合でどれだけ全力疾走ができるかどうかの持久力の部分も大きい。


この本は、代表の試合を見ているだけで分からない「気付き」を与えてくれる。


そして、同時に自分自身の仕事や人生に少しだけ転用できるヒントとしても読むことが出来るかもしれない。