フリー<無料>からお金を生みだす新戦略

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略


年末から年始にかけて読んでいる本について。


ロングテール」の提唱者で『ワイアード』編集者でもある著者の
<フリー>無料の分析。各所で話題の書。


デジタル化で情報や音楽などいろんなものが無料になって、今やモノを売るということは無料で手に入るものを敵に回し、<無料>と競争して勝ち抜かなければならない。


正直、この本を読むまで「情報無料化にはさからえないんだからネット課金なんてあえりえない」「無料で情報提供してでも、ネットに進出すべき!」とステレオタイプに思っていたのだけどどうも事態はそんな単純じゃない。
それに、ネットってどうやって儲けるんだろうというギモンに対する答えはついぞ見つかっておらず、なんだか気分的に「ネットVS紙」みたいな新旧対決・感情論に陥ってしまうことも多かった。


だが、この本を読むと、<無料>というものがこれまでいかに提供されて来たか(20世紀までのフリーはマーケティング手法だった)そして、21世紀にどのような流れになっていくのかが明晰に分析されていて、面白い。


「フリー」になっていくと、情報や文化や著作権が消費され、ダメージを受けてしまうという旧来の批判が、どうもそんな単純じゃないんじゃないかとさえ思えて来る。



以下、引っかかったポイントを箇条書き


・無料とは<潤沢さ>の現れで、全てのものは無料化に向かう宿命にある、万有引力のようなもの。
(ケータイもネットも通信費の希少さはどんどん薄れている)


・グーグルではフリーが当たり前。なぜならそれは最大の市場にリーチして、大量の顧客をつかまえる最良の方法だから。


・アトムからビットに切り替わると、フリーへと向かう。
(ビットは格段に流通しやすい)


・音楽業界ではデジタル化によって、CDは売れなくなった。しかし、ミュージシャンは自分の曲を流通させることがしやくなったため、認知を上げる方法は格段に上がったし、そのことでグッズやライブなどで収益を得るチャンスが高まった。


・もし本が無料になれば、そこからカスタマイズされた情報に希少価値が出るだろう。(つまりコモディティ化した本の中身は無料で、特定の読者にカスタマイズした情報は有料で、というふうに)。つまり「作家の敵は著作権侵害ではなく、世に知られないでいること」


・「フリーミアム」=あるバージョンは無料で、別のバージョンは有料で。「支払い能力に応じて」支払うのではなく、「必要に応じて支払う」。


・原価価格がゼロに近い。(使い放題、食べ放題プラン)


フリーライダーは問題にならない。


・中国の海賊版は、売れるための歓迎すべき方法。



特になるほどと思ったのは…


・お金に変わって、二つの非貨幣要素が力を持つ。それは、「注目経済」と「評判経済」。


・さらには経済での欲望の変容が見られる。お金が欲しいからだけでなく、何かを言いたい、注目されたいがために無償で提供する。「贈与経済」。テレビを見る時間を削り、ブログを書く時間を増やす。(受け手から発信者へ)


・全ての願望の中で最上位に置かれるのは「自己実現」。仕事でそれが得られることは少ない。ウェブの急成長は間違いなく、無償労働によってもたらされた。非貨幣的に無料で交換される社会が突然、生まれた。(非貨幣的生産経済はこれまでにもあった)



そして、これ。


「タダには太刀打ちできっこない?」
→フリーと戦うには簡単なのだ。
少なくとも無料版とは違うものを提供すればいい。会社員がオフィスの給湯室にある珈琲の横を素通りして、スターバックスで4ドルのラテを買うのには理由がある。おいしいからだ。ちょっとしたぜいたくで自分を甘やかしたいのだ。



フリービジネスの全てがつまった慧眼の書です。