『新しい資本主義』原丈二

かつてホリエモン村上ファンドが発言力を増し、
「会社は株主のもの」などといかにも正論な論理を振りかざしてきた時、
どうにも違和感を覚えたものだった。
当時「M&A」という言葉も流行り、ファンドがマネーゲームを仕掛けてきた時流もあって、反論をみかけることも少なかったように思う。


そして時は流れ、時代は金融危機を迎える。
世間では、金融資本主義に変わる次なる資本主義の話を求めている。
そこにぴたりとはまるのが、原丈二氏なんじゃないだろうか。


彼が掲げるのは「公益資本主義」

ベンチャキャピタリストとして、短期で利益を上げることだけを是とするヘッジファンドと異なり、理念と技術力のあるベンチャーを長期の視点に立って資金援助する。それだけではなく、国連などとも連携し、途上国援助、貧困撲滅などにマイクロクレジットといった事業を元にした支援を確立し、社会に貢献する事業を続々と起こしている人物でもある。


彼の根本にあるのは、

「会社の持つ技術で世の中に貢献し、その結果、利益を得る。
その利益を使って、さらに貢献が出来る。その繰り返しこそが、事業である。

という考え。



会社は久しく、株主の方ばかりを向いていると言われてきた。だがそれは内部留保を株主配当へと向けさせようとする、ファンドの圧力のせい。その悪しき習慣も、今回の危機で見直される契機を得た。


彼の言うような社会貢献を軸にした企業が社会に多く生まれてくれれば、
働く側にとっても「金」以外の価値基準となるのだと思う。

働くことが、「貢献」に直結する。
今、そんな企業は少ない。それを求めるならば、NPOにでもいけと言われてしまいそうだ。


表面的なCSRではなく、社会貢献こそが利益になるのが当たり前の時代になれば、
日本は世界の中で注目を浴びる国になれるんだろう。
彼の話を読んでいると、夢物語で終わらせたくない、と思ってしまう。。

新しい資本主義 (PHP新書)

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